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『科学の未来を考える』

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日時:2017年2月20日

本年の歴史部会の命題「西洋近代の再考」の一環として『科学の未来を考える』をテーマにして、NHK特集「フランケンシュタインの誘惑-科学の闇」(90分)を鑑賞しながら、人間にとって科学とは何か? 科学は人類にとって必要不可欠の、未来を拓く希望なのか? 又は人類を破滅に導く絶望か? などを参加者17名で議論した。科学の闇の面で、ノーベル賞のキュリ―夫妻は発見したラジウムの放射能に侵されて死亡。ラジウム時計の生産に関わった女性たちは次々とガンに侵されて死んだ。原爆の父・ロバート・オッペンハイマ-は、ドイツが開発する前にと始めた原爆開発を、ドイツが開発してないと分かった後にも、怖さが分かると抑止力になると開発を強行して広島、長崎の投下につながった。さらに窒素固定法でノーベル賞と世界の食糧危機を救ったドイツの化学者・ハーバーは終戦を早め祖国を守る名目で、塩素ガスとマスタードガスを開発して、一瞬にして、数千人を殺傷する毒ガス兵器を作った。その妻は夫に抗議自殺したが、彼は愛国・ナショナリズムに献身した。科学兵器は常に科学技術と共に進化し、殺戮力を強めてきた。今、日本でも、防衛省の産学研究費投入が問題になっている。臨床医療の進展も人々の延命や長寿に役立っているが、一方でクローン人間や生殖医療などでの倫理問題が発生している。不老不死への挑戦も始まっている。AI問題は、もっと深刻だ。2045年には、人間の脳の働きがそのまま人工知能(AI)に転換でき、不老不死の超人類が出現するシンギュラリティー(技術的特異点)の時代を迎えるとも言われている。

人類の進化や成長に不可欠と言われる科学技術は、果たして人間を最終的に幸せにするのだろうか。現在の先端科学者たちは、一分一秒の人に先駆ける世界的競争時代にあり、自分の発明・発見したのものが,善か悪かを判断する立場にない、それは政治家や倫理学者の仕事で、好奇心の暴走・科学という一度開けられたパンドラの箱は、もう止めようがない実態を明かにする。専門化・細分化した知の暴走を防げないらしい。とすれば、我々のようなアマチュア集団の方が、より全体知・人類知が働かないかというのが今回の試みである。便利という科学技術への欲望は、止められるのか。こんなスピードで進んで果たして人間はついていけるのか。改めて、一月のテーマ-「ヒトとは何だろうか」が問われる議論へと戻った。(文責:小野博正)

 

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