ハリス日本滞在記 (1857.4.1~ 7.31:テキスト 第338ページ第 4行~第383ページ第 2行)
要旨
阿部にとり、将軍への大統領書簡の直接提示のための、ハリスの出府容認など論外である。従って下田奉行に全権委任と称して、ハリスの江戸出府要請を阻んできた。
結局この期間内にハリスが成し遂げた仕事は、先に締結(1854年3月31日/嘉永7年3月3日)されていた日米和親条約の、執行命令的性格を持つ補完条約である下田条約の締結(1857年5月26日/安政4年6月12日)である。
下田入港(1856.8.21)以来、1857.7.31まで11か月を経過しても、ハリスの出府要求はまだ実現されない。即ち、江戸城における合衆国大統領書簡の将軍への直接提示と陳述は、実現していない。この原因は、時の老中首座阿部正弘の、攘夷主義者に劣らぬ外国嫌いの、開国反対論者にある。
下田条約の主要項目
第1条 合衆国船に対して長崎を開港する。
第2条 下田と函館における合衆国人に永住権を与え、函館
港における副領事の任命権を認める。
第3条 通貨の相場を定め、合衆国人の従来の支払い額100
ドルに代えて、今後は34ドル50セントとする。
第4条 合衆国人は全て同国領事の管轄下におかれ、同国の
法律によって審理される。
第5条 長崎、下田、函館の港での合衆国船の修理と、代金
のバーター支払いを認める。
第6条 合衆国総領事の自由通行権を認めるが、その行使は
難船などの切迫の場合に限るよう下田奉行所は要望
し、領事も承諾する。
第7条 総領事および随員に、日本商人からの直接物品購入を
認める。 (文責 市川)