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GJ研究会-「中国問題」

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元中国大使横井裕氏から「3期目習近平政権の現在位置」と題するご講演をいただきました。

日時 2024年4月22日(月) 午後3時から5時まで
場所 国際文化会館401号室
人数 16名
テーマ 中国問題

議事要旨
元中国大使横井裕氏から「3期目習近平政権の現在位置」と題するご講演をいただき、その後質疑応答を行った。

(講演要旨)
中国大使として、いつも心がけていたことは、要人と会ったとき、短い言葉で何を伝えるかということ。就任の際、習近平国家主席に挨拶した際にも、他の大使は中国語ができない人が多かったので、最後の順番だったこともあり、直接中国語でメッセージを伝えることができた。習近平が3期目に拘った理由は、毛沢東、鄧小平が死ぬまで権力を離さなかったのを見て、自分もこれに倣った。胡錦濤は2期10年に従ったが、2期目には、レームダック。今や、「極権」を掌握しているといえよう。1953年生まれで、父親の習仲勲は副首相までやったが、1962年、習近平が9才のときに失脚。1969年から1975年まで陝西省梁家河(延安の近くだが大変な田舎)に下放。幼少期から苦労の連続で、8度目の申請で共産党に入党。75年に清華大学化学工学科入学。79年軍事委員会弁公庁以降、河北省、廈門市、福建省寧徳地区、福州市、福建省長、浙江省書紀、上海市書紀など、キャリアのほとんどを地方勤務で過ごす。「過去に一緒に仕事をした人たちだけが信頼できる人材」。

1997年15回党大会で、151人中151位の中央候補委員。一番ビリ。しかし、2007年の17回党大会では、何と63歳以下の幹部予備人選名簿でトップ。この背景には、民主推薦用紙を使って、選挙を認めたため、政治的野心のなさそうな習近平を担ごうということで、「意図せず、思わず、棚からぼたもちで」最高指導者になった。共青団に対抗して、上海閥や太子党から担がれたと言われる。北京オリンピックから上海万博の時代は、中国が最も開放的なときで、政治の腐敗も進み、温家宝は、「中国人民は、共産党の統治を認めないかもしれない」と言っている。就任後、反腐敗の名目で著名な大物、徐才厚、郭伯雄、周永康を逮捕。「中国の夢」「中国の大国化」と言う将来の希望を打ち出し、日本旅行を解禁し、行き過ぎた反日感情を緩和した。2017年19回党大会で2016年の「核心指導者」を確立し、国家主席の任期2期10年を撤廃。但し、これには党内外に大きな批判があった。しかし、2021年には、これまで毛沢東と鄧小平しか出していない「歴史決議」を3回目に出し、党100年の歴史を肯定し、「習近平の新時代」が始まると強調。2022年20回党大会では、習近平がすべての権力を掌握し、指導部の任務として、「経済発展」に加えて、「国家安全」。強いリーダーシップだが、これは意外に脆い面もある。習近平政権が直面する課題は、経済不振(不動産バブルの崩壊、少子高齢化、若年層の就職問題)、対米問題。

(質疑応答)

-(中国の統計の信頼性は?)でたらめだ。ただ、トレンドはある程度把握できる。実感として経済力はある。

-(ウクライナ戦争に対する中国の対応)2022年の冬季オリンピックにプーチンが来て、習近平は大喜び。中露共同声明では、「友情に限界なし」という異例の文言があったが、その後すぐにウクライナ戦争が始まり、中国は大変慌てた。その後、トルコが入って、停戦合意の動きもあったが、米英の論調が変わってこの戦争はやめさせないということになった。中国の最大の悪夢はロシアの民主化だ。ロシアへの経済制裁は欧米や日本は実施しているが、アジアでは、シンガポールしか参加していない。

-(台湾問題)習近平は自分は台湾を最もよく知っていると思っている。アヘン戦争で取られた香港を戦争なしに取り戻したことは、最高の孫子の兵法。とにかく、金を使って、台湾を諦めさせようとするだろう。うまく行かなかったらミサイルなどを飛ばす。ただ、ミサイル軍のトップが逮捕されるなど、なかなか大変だろう。

-(日本の国防)日本の防衛力強化はよかった。ただ、抑止だけでは限界があり、自国の核保有は難しいかもしれないが、核シェアはあっていいと思う。中国に対する日本の安全保障としては、(1)総理の覚悟(2)外交部とのチャネル(3)裏チャネルが必要。近年、中国を敵視し、先方と議論もしない傾向が見られるのは心配だ。自国の国益を重視することは当然だが、外交の役割は先方の立場も考慮して交渉を進めること、このことを自分はいつも心がけて務めて来た。

-(対中外交)米国はイェレン財務長官が1週間近く中国にいて、じっくり対話。今の日本は、中国憎しということで、十分な対話をしているといえない傾向があるのは心配だ。

-(中国の経済不振)中国は、日本のバブル不況を十分勉強している。今、需要不足に対し、景気対策をすべきという声があるが、どうも習近平は「技術」は重視しているようだが、モラルハザードを気にし過ぎているようだ。アルビン トフラーの「第三の波」は中国で大流行。AI、ブロックチェーンにも関心があり、地方政府は、不動産開発の後の投資先として、ユニコーンを狙っている。

-(習近平の後継者)誰がなるか分からない。ある程度重用されると外されたりする。今、福建省出身で習近平の浙江省時代の秘書役だった蔡奇氏が中央弁公庁トップになり、注目されている。同氏は、江沢民の葬儀を取り仕切り結果一時大きな問題になった白紙革命を鎮静化し、訪米でも習近平の隣にいた。

(文責 塚本 弘)

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