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GJ研究会 – 令和日本のヴィジョン:「外交、安全保障」

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日時:2022年2月25日(金)10時から12時30分
場所:zoom
出席者:14人
テーマ:外交、安全保障

議事要旨
まず、3人から報告があり、その後議論を行った。

(小野)「進歩、進歩、進歩、敵、敵、敵、人は勝たねばならぬ、これじゃ、我ら人類は死に急ぎ。」(ノーテンキの唄)。あらゆる西洋的戦略論は忘れましょう。疑心暗鬼が戦争を生むので。2006年の東大の世界史問題は、主権国家と戦争に関し、「ウエストファリア条約、総力戦、国際連盟、徴兵制、十四カ条、ナショナリズム、戦争と平和の法、平和に関する布告、の言葉をすべて使って510字以内で説明しなさい」というものだった。模範解答も示されていたが、これほど難しい問題をすらすらと解答できる高校生が何千人もいるのだと、感心した。だが、一瞬後に思ったのは、まてよ!あれから16年も経つのに、世界平和に関する大論文は聞いたことがない。戦争の種は、「国家」「政治思想」「人種」「宗教」の4つだ。戦争は人類最悪の悪だ。(半藤一利)仮想敵国を作る限り、戦争は永久に終わらないし、人類の滅亡に繋がりかねない。抑止力という魔力。日米安保は再考すべき。日本には最高の憲法がある。GHQに押し付けられたという意見もあるが、自分は幣原喜重郎のイニシアテイブで行われたと考える。日本は国連改革案を出すべき。西洋文明では地球は持たない。日本は恐れずに平和外交を推進すべき。

(塚本)ロシアがウクライナに侵攻という大変なタイミング。日本の外交安全保障を考える良い機会だ。東大の入試問題、面白い。結局、人類は戦争を克服できていない。ただ、日本は、憲法第9条で、国際紛争を解決する手段としての戦争を否定しており、戦前のように戦争を仕掛けることはあり得ない。しかし、ウクライナを見ても分かるように、中国、北朝鮮が仕掛けてきたときにどうするかだ。憲法第9条の精神で、これを防げるとは思えない。ビスマルクの教訓「大国は自国に有利であれば国際法に従って対処するが、不利であれば国際法を無視して力に任せて自国の要求を主張する」は、今でも通用している。ウクライナ問題については、厳しい経済制裁に日本も参加すべきだ。このウクライナ侵攻は、結局ロシアにとって短期的な戦術としては成功かもしれないが、長期的な戦略としては、失敗に終わると考える。ウクライナ問題は、台湾有事にも関係する。日米同盟を踏まえ、台湾有事に備えることが大事だ。

(N氏)北朝鮮問題だが、韓国軍、米軍に比べ、通常戦力では、著しく劣勢。このため、非対称的な軍事能力(核、ミサイル、化学生物兵器、サイバー)に注力。米国の北朝鮮政策は、「話し合い路線」「無視」「強硬路線」で揺れ動いている。中国と北朝鮮は、「唇歯の関係」と言われることがあるが、内実は複雑で、結局は江戸時代の農民政策(生かさぬように殺さぬように)に譬えられるような関係。今年に入って、7回のミサイルが発射されているが、これは、米朝協議が事実上ストップしているために挑発している。日本のミサイル防衛だが、各種のジレンマがある。まず、ミサイルは圧倒的に攻撃側に有利(ピストルの球でピストルを命中させるのは至難)、敵基地攻撃能力も北朝鮮を常時監視する能力が必要だが、容易ではない。北朝鮮問題は長い歴史的経緯のある複雑な問題だが、この脅威に対し、防衛力の強化のみで対応しているのが現状だ。関係国の複雑な利害が絡む極めて難しい問題ではあるが、北朝鮮も受け入れ可能な包括策を作る努力が必要ではないか。米国が朝鮮半島にプレゼンスしていることの意義を過小評価すべきではない。

情報機能の強化は、重要。自衛隊でも統合情報組織である情報本部が設置され、2000人規模で運営。ただ、情報機能を強化すれば相手の手の内が分かるという単純なものではなく、人間の活動であるが故に、人間の弱点が影響を与える。最重要な戦略レベルの情報は情報機能を強化しても分からない。(指導者の頭の中)。やがて何が起こるか知る者は一人もいない(旧約聖書の言葉)(2012年のバラク国防相のシリアについての予言。イスラエル国防軍は10年後の予想はgive up)。キッシンジャーは、情報機関には、政治指導者の決定を正当化しようとする傾向がある、すなわち政策決定を導くというよりは、政策決定に追従する傾向があると警告している。

その後、皆さんから次のような議論があった。

(平和論について)
-プーチンには、現実を見せつけられた。理想を言っても、力がものをいうのが現実だ。
-絶望しかない。アメリカもイラクに大量破壊兵器があるという口実で侵攻した。このような行為をやめさせなければならない。
-安全保障の考え方は近年多様化している。軍事面だけではなく、経済力を強めることも大事だ。日本の国力が強いときは、韓国も日本に学ぶ姿勢だった。
-石橋湛山は、「善か悪か」だけでなく、「得か損か」を考えるべきと主張した。プーチンの独走を許さない仕組みが大事だ。ヒットラーは、国民投票を4回やって、国民の支持を得て、あのような独裁者になった。
-長期的に望ましい方向を考えるうえで、理想論は結構だ。だが、短期的に現実にどう対処するか、現実論も必要だ。
-リベラルなリアリズムが大事だ。東大の入試問題の模範解答、せいぜい50点ぐらいしか、あげられない。ステレオタイプ的な歴史理解だ。30年戦争は、宗教戦争だったが、カソリックの仏のリシュリューは、自国の有利になるように、プロテスタントと組んだ。政治の世界では、善から悪が生まれるし、悪からも善が生まれる。マックスウェーバーは、政治の世界を志す者は、悪魔に魂を売り渡す覚悟が必要と言っている。
-とにかく理想を掲げないで、現実に追従しているだけではダメだ。
-現実を踏まえた理想論が必要だ。核は使えないという点で、ある意味で抑止力になっている。今や、無人兵器やロボットが開発されており、恐ろしい。国連は解体して、再構築すべきだ。

(ウクライナ問題)
-プーチンがあそこまでやるとは思ってなかった。キエフに傀儡政権を作る目的かもしれない。ウクライナ軍がどこまで頑張るかだ。今後、ロシア側の戦死者がどのぐらい出るかが鍵だ。今回の件で、国民がどのぐらい戦う意志を持っているかが大事ということが分かった。
-ウクライナは、北岡先生の「世界地図を読み直す」でも文化大国とされており、大鵬の父(コサック将校)のふるさと。プーチンを説得することができたメルケルがいないのが残念。
-プーチンは、ここ数年、歴史を研究し、スラブ民族としてウクライナをロシアの発祥の地として、何としてもロシアの支配下に置きたいと考えたようだ。ただ、今回の行為は、経済制裁を招き、通貨や株式の下落を引き起こし、ロシアの崩壊につながると思う。日本のマスコミでこうした論調があまり見られない。(ロンドンエコノミストでは、プーチンのまずい仕事というタイトルで、そのことに言及している)
-トランプはプーチンを天才と言っている。(とんでもない議論だ。)
-核のテロの心配はないのか?(ソ連崩壊の後、全量、ロシアに運ばれている。)
-経済制裁には、ある程度時間がかかるが、粘り強くやっていくしかない。

(北朝鮮問題)
-北朝鮮が南進する可能性は?(有事の際は、在韓米軍の司令官が、全体の指揮をとることになっており、韓国はこれを改めたいと思っているようだが、まだ、実現していない。)
-韓国も核武装すべきが世論調査で70%だ。
-日本の核武装だが、東京、大阪という人口密集地を有するため、核兵器の相互抑制論が働かない。こうした大都市を一発目で破壊されたら、相手型を破壊するといっても、それほど大きな被害ではないので、抑止力が効かない。
-(拉致問題を含め、包括的な解決を図るのは大事だが、どう相手方と糸口を掴むか)トランプのとき、チャンスはあったかもしれない。なかなか容易ではない。
-日本の海外駐在武官はどのぐらいか?(85大使館に70名)
-スイスは、武装中立だ。戦闘機290機、戦車2000台、民兵60数万人(いざとなると召集)。ヒットラーに対し、ギザン将軍が陣頭指揮して国境を守った。

(文責 塚本 弘)

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