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GJ研究会 – 令和日本のヴィジョン:「教育、人材育成」

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日時:2022年1月28日(金) 午前10時から午後1時
場所:ZOOMに依るオンライン開催
参加者:18人
テーマ 教育、人材育成

議事要旨
先ず4人から報告があり、その後、議論を行った。

(小野)「文部省解体を論ず」、日本は、革命を起こさないと変わらない。明治から太平洋戦争まで77年は、近代化を目指し、最後には戦争に敗れた。終戦後77年は、経済発展を目指したが、今は転換期に立っている。これから77年後の2099年にどのような国を目指すか。ポストコロナの時代は、答えのない時代だ。正解のない時代には、自ら答えを導き出す能力が必要だ。明治以降、日本の教育は、国に役立つ人材を育てることを目標にしてきたが、これからは「一人一人の個性が発揮されるような教育」「知識の詰め込みではなく、個人の潜在能力を活かす教育」を目標にすべき。その意味で、文部省は解体し、新たな道を目指すべきだ。ユニクロの昨年12月23日の全面広告は、「求む。服を変え、常識を変え、世界を変える人」。この視点も大事だが、世界が英語化、進歩主義、科学主義に向かっている中で、日本は、ガラパゴスとして、独自の良さを守り抜くべきではないか。

(多田) 岩倉使節団の一員の田中不二麿は、「丁寧な調査から良質な情報が得られる」とし、その基礎となる教育体制の構築に貢献した。今、学校教育は大改革中だ。一つは、「高大接続」ということで、高校、大学入試、大学を三位一体で改革しようという試みだ。これにより、ドリル学習から脱却し、主体的な発想が出来る多様な人材を育てようとしている。もう一つは、「学習指導要領」の改革だ。こちらも10年に一度の改革で、自分で考えて、様々の問題に対応する能力を育てようとしている。令和日本ビジョンとして予想されるのは、「地球温暖化」「SDGs」「戦争のない社会」「今後の学校教育のあり方」など国民的議論が欠かせない内容であろう。そのためには、多くの国民の知識を増やし意識を変革する必要があり、膨大な社会人教育が必要となる。その実現のためには、多くの教育ボランティアが必要である。ボランティアを増やすには利他の心を持った人々を増やすことが一案である。

(三島) 製造業における人材育成について、述べたい。自分の経験で、大学で学んだことで役に立ったのは、実験レポートの作成で思考錯誤したことだ。実際に製造現場でうまく行かなかったとき、この経験を踏まえ、データを分析し、仮説を立てて、何回か試行錯誤を繰り返して行くうちに、解決に至った。会社の人材育成では、アメリカ企業はかなりの資金をこれに当てている。社会では、文章能力が求められるが、この基本は、論理力で国語が大事だ。統計処理など数学も重要だ。学校で、数学、国語の基礎をきっちり教えることが必要と考える。

(泉) 教育に関し、「五か条の御誓文」の第三条では、「官武一途庶民に至るまで其志を遂げ人心をして倦まざらしめんことを要す」とされている。伊藤博文は、「国是綱目六か条」で「自在自由の権」と「職住の適意」を主唱し、幕藩体制下の身分制、職住の束縛からの解放を訴えた。佐々木高行は、米国でミンスローという人物から「日本は数千年の歴史を有する文明国で、技術や法律は足りないが、道徳や宗教についてはむしろ他国より進んでおり、今さら他国の宗教を採用する必要などどこにあろうか」と言われる。久米邦武は、実記の第五巻で、「そもそも西洋人は資性元悪なり、欲情の熾なるごとく、求福の情もまた熾んなり。」として、道義国家日本とは異なるとしている。ただ、米国で実学を重視していることに感銘を受け、日本では、「高尚の空理、浮華の文芸」に編って「民生切実の業」を軽視していたことを猛省している。福沢諭吉は、「天は人の上に人を造らず、人に下に人を造らず」とし、実業につき、銭を稼げと発破をかけたが、富の追求だけでなく、「精神の高尚」も要件としていたことは、忘れてはならない。すなわち、和魂洋才である。ただ、グローバル化した現在では、球心球才が重要だと思う。

その後、皆さんから次のような議論があった。
–大学で長年教鞭をとっていた。文科省や大学事務局には不満が一杯だ。共通一次の監督を大学の教員にやらせるのはおかしい、エリートを育てる仕組みがないのも問題。

–OECDのEducation 2030では、2030年には6割が今はまだない仕事とされている。博士号を持つ人が減っているのは日本だけ。尖った人材を育てるべきだ。

–エリートも大事だが、どの組織でも、大体2割がエリート、6割は普通の人、残り2割が落ちこぼれといわれる。エリートは放っておいても伸びるが、大事なのは、6割をどうレベルアップするか、落ちこぼれをどう少なくするかではなかろうか。

–デビット モルレーは明治初めの日本の教育体制の整備に貢献した。

–堤未果「デジタルファシズム」では、子供がスマホに溺れる危険を訴えている。自分で考える力を失くしてしまうおそれがある。ジョブズも、ビルゲイツも、自分の子供にはスマホを与えていない。学校でタブレットを与えることに反対。

–今や、ITを使いこなせないと社会から、切り離されてしまう。自治体も老人にITを教える活動を行っている。

–これからは、プログラミングぐらいできないと時代に遅れてしまう。ホリエモンは、ITの専門校を作ろうとしている。

–子供には、好きなことをやらせてはどうか。

–暗記も必要かと思う。こうした過程を経て、湯川や北里が生まれたと考える。もちろん、考える力を育てることは大事。国全体のことを考えると、先ほどの6割の人々をどう切磋琢磨させるかも大事だ。

–4点指摘したい。(1)考える能力を育てる。このためには、知識が必要。子供にはある程度強制がないとダメ。(2)これからは国際性が必要。外国に行くと、日本がいかにいい国かということが分かる。(3)貧乏な家庭に生まれた子にも教育の機会が与えられることが大事だ。(4)志ある人を育てる教育が望ましい。

–大谷翔平の使っていたマンダラチャートは、体力、知識、勇気を養う良い方法だ。渋沢栄一の母の言葉「あんたが嬉しいだけじゃなくて、みんなが嬉しいのが一番」は大事な教えだ。

–政府は最近「教育未来創造会議」を発足させた。安宅和人氏や長野県知事がメンバー。日本ではユニコーンが少なく、いかに「カドのある人材」を育てるかが課題。最近、蜘蛛の糸を人工的に合成して注目を浴びている関山和秀氏は、幼稚園から慶應で受験勉強なし。得意なことだけをやって来た。ユニクロの広告、面白い。こういう人材が必要だ。

–ボランティア活動の日々を過ごしている。ボランティアがもっと広がるようにしたい。若者が生きづらそうだ。学歴にこだわらない社会に賛成。池内了は、科学技術の危険性を指摘している。

最後に、プレゼンをした皆さんから一言ずつ。

(小野)教育の問題は、我々が未来をどう考えるかの問題とも言える。2045年には、人工知能が人類の知能を超えるシンギュラリティ(技術的特異点)に至るという議論もある。自分は、あくまでも進歩を目指すことには懐疑的だ。日本はガラパゴスでいいのではないか。

(多田)3時間話したが、結局議論は深まっていない。

(三島)ITはツールと考えればよい。大事なことは、考える力。その意味で、数学は大事だ。

(泉)3時間の議論、よかったと思う。ただ、これを整理して、続きの議論でさらに深めることが大事だ。進歩はし過ぎたらダメだ。

(文責 塚本 弘)

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