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GJ研究会:「明治維新の意味及び今後の日本のあり方」

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日時:2021年12月14日(火) 午前10時~12時30分
場所:ZOOMに依るオンライン
参加者:17人
内容:明治維新の意味及び今後の日本のあり方

議事要旨本年7月の北岡 伸一先生の講演を踏まえ、我々自身で明治維新の意味を議論するとともに、令和日本のあるべき姿についても議論した。

まず、森本敦之氏から、北岡先生は、明治維新は西洋列強からの脅威に対し、近代化を遂げなければ日本の独立は維持出来なかったと考えて行った「近代国家制度」構築のための革命であったと評価しておられると総括された。

また、明治維新のキーワードは、「公議輿論」で、政治を担う意思と能力のある人間が、私的な利害は度外視して、国益だけを考えて、徹底して議論してベストの議論を取った。岩倉使節団は、海外に学び大いに視野を広げた。何よりも、リーダーシップがとれる人材(阿部正弘、勝海舟、西郷隆盛、大久保利通など)が輩出し、また、リーダーは出身藩、身分の上下に拘らず、有能な人物を探し出して登用した。

このような考え方を今の日本にどう活かすか。「現代の日本は極めて閉塞的な状況にある。そのために何をなすべきか。簡単な答えはない。ただ大事なことは、最も重要な問題に最も優れた人材を集めて取り組んでいるかということである。それを明治維新の歴史は教えてくれている。」と北岡先生は述べておられる。

これに対して、日本の状況はどうか。今日の日本は、「課題先進国」だ。少子高齢化への対応と財政再建、A I/DX対応と国際競争力、安全保障と外交、国内の災害列島対策と地球的気候変動対策など、正に“新しい国のあり方”が問われている。今こそ、大久保利通やメルケルのようなリーダーが出て、広く人材を登用し、機能不全や制度疲労を起こしているこの国の危機に対し、“令和維新”を起こすべしと警鐘を鳴らすべきではないか。

次に、塚本から、グローバルジャパンの幹事メンバーで議論した結果の紹介があった。
ビジョンについては、少子高齢化など具体的な課題を取り上げて議論を深めていくことが必要だ。また、20周年の記念シンポジウムでも「美し国ニッポン」ということで、近藤誠一氏にも共鳴していただいたが、これ以上の成長を目指すのではなく、文化的で暮らしやすい日本を目指すべきではないか。政治のあり方に関しては、政治家、官僚、メディアいずれも明治の先達のような気概が感じられない。この一因は、危機感の欠如ではないか。今も、中国、北朝鮮に囲まれて安全保障上は大きな危機だ。人材はいないわけでなく、どこかにいる。これをどう見つけて登用するかだ。政治家だけに任せていても日本の未来は拓けない。経済界ももっと政治に向かって注文すべきだ。「青天を衝け」でも、商工会議所が建白書を出すシーンがあったが、今の経済界はそういう気迫に欠けている。メディアも政局ばかり論じていて、石橋湛山のような天下国家のあり方に対する卓見を述べる人が少ない。なぜ、今、ホンダ、ソニーなどが出てこないのか。ベンチャー企業を育成する仕組みが不十分だ。北岡先生は、世界の途上国に日本の経験を伝えることが大変重要とされた。アフリカなどでは、多くの国がまだ維新前夜だ。中国は鉄道、道路、港湾などのインフラ整備を進めているが、日本は教育、医療などソフトなインフラ作りに貢献すべきではないか。

泉 三郎氏から、令和日本のビジョンについて、建設的提言であり、明治創業の精神、知識に学ぶこと、近代文明を超えるもの、という3つの条件が示された。さらに、立論の基礎に岩倉使節団の群像や留守政府の要人、その他の重要人物たちの発言、提言、語録、日記、手紙などを引用することにより、明治創業世代の精神と知恵を立体的に学ぶことができるとされた。2021年は新型コロナ大旋風が吹き荒れ、数百年にわたった科学技術文明、資本主義文明に猛省を促す大警告を発した。現代文明の大樹は余りにも繁栄し、余りにも複雑になり、その分、根や幹がやせ細り、その中で、人間そのものも衰弱し、劣化してきているのではないか。我々は今こそ明治初年に回帰して、謙虚に「人として生きる」ことの意味、「文明と人間の関係」を問い直すべきではないか。

その後、皆さんから以下のようなコメントがあった。
–来年、日本のあり方についての主要課題について、議論したい。人材こそ最重要課題で、このためには、教育のあり方を論ずるべき。歴史部会とも互いに交流深めるべきだ。中国とは、仲良くすべきであり、抑止論を脱却すべきだ。

–岩倉使節団は西洋社会を丸ごと理解しようとしたが、今は、地球を丸ごと理解する必要があり、それに対し、日本は何をすべきかを論ずるべき。アフガニスタンで亡くなった中村医師のように、途上国への貢献が大事だ。教育では、薩摩の郷中教育、長州の松下村塾などの人作りに学ぶことも重要だ。伊藤博文が、韓国統監時代に、清国の領土への進出は避けるべき、中国の離反とともに、諸外国から敵と見做されると述べていることは大事だ。

–移民問題(高度の技術者を含む)を論ずるべきだ。世界から尊敬される日本を目指すべきだ。

–日本の未来にとって大事なことは、創造的破壊だ。明治も、そして戦後の日本も、農地改革のような創造的破壊によって、発展を遂げた。今の日本は既得権益で硬直化しており、経済の新陳代謝も遅れている。世界のユニコーン900社のうち、470社がアメリカ、日本は6社だ。

–明治維新の光と影を考えるべき。明治の国威発揚の犠牲もあり、負の遺産はまだ続いている。

–どうも、皆さんの議論は一方的に主張するだけで噛み合っていない。(これに対し)今回は、それぞれ考えていることを述べてもらうが、これからは絞った課題について、議論する予定である。

–教育では、明治初期の工学教育に活躍したヘンリー・ダイアーに着目すべき。産経新聞では、今年5月から「転換点を読む」という特集をしており、日本の今後について論じている。ダイアーは、150年間を見通して、著書「大日本」で、日本人の可能性を論じており、日本人が模倣ばかりしているという見方はあまりにも時代遅れであるとしている。

–外国の半導体を日本に導入する仕事をしているが、ソフトウェアはほとんど英語で書かれている。世界から見ると、日本はガラパゴス化している。

–創造的破壊を日本で行うのは、難しい。明治維新も先ず破壊があって、それから岩倉使節団が外国に行って青写真を書いた。戦後も、先ず敗戦という破壊の後に、創造があった。今、日本は沈滞していると言われているが、それでも世界第3位のGDPを誇っており、資産では世界一だ。これを壊すのは、難しい。

–基本的な点だが、これ以上成長を目指すべきかどうか、この辺で、じっくり考えるべき。

–今後テーマを絞って議論していくべき。また、明治以降の日本は、欧米をモデルにし、かつ、中央集権的に発展してきたが、今後は、どういう形で進むべきか。今後の日本の進むべき道を考える場合、色々足りないところはあるかもしれないが、今ある現状を踏まえて、方向付けをしていくのがいいと考える。

–課題先進国の日本だからこそ、世界に対し、良い解決のモデルを提示出来るし、することが責務であろう。コロナ、気候変動といった人類にとって大きなテーマについても、地球市民の一員として、解決策を示すことが望ましい。

–それぞれの方々から体験を踏まえ、よいご意見をいただいた。これから、テーマを絞って議論していくこととしたい。今日の議論の中で、伊藤博文が韓国統監時代に中国への進出を控えるべきとしたこと、ダイアーが日本人の発展の可能性を高く評価していたことなどは、印象的だった。また、歴史部会との関係で、グローバルジャパン研究会は未来を考えるが、相互に交流することは大事だと考える。
(文責 塚本 弘)

 

 

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