日時:2021.12.8 13:00 ~ 15:00
場所:ZOOMによるオンライン開催
内容:第四十七巻「パリ その6」
明治6年(1873年)1月21日から明治6年1月22日パリに留まり市内外各所を見学した。
1月21日:ゴブラン織工場
パリ13区(南東)にあるゴブラン工場を見学。ゴブラン織りは京都の綴れ錦に似た絵画のような精密、細微な織物。木綿糸を縦糸、色糸を横糸とし、同色の色糸は十数種類の濃淡があり、この微妙な色合いで陰陽明暗を付けまるで絵画のように織り上げる手法。セーブル磁器と同様に国営工場で伝統技術の保存に国を挙げて努めている、と久米は賞賛。
同日:チョコレート工場
チョコレートはカリブ海西インド諸島の植民地「マルテニーク」「グアダループ」カカオ豆を原料として作る。関連して、植民地であるアフリカのアルジェリア、セネガル、アメリカ(中南米)のマルテニーク、グアダループ、アジアの安南(ベトナム)等の産物について概括し、貿易による利、特に英仏の利、について考察する。
1月22日:パリ天文台
14区(南東、13区から時計回りで隣接する区)にあるパリ天文台に行く。リュクサンブール公園から真南に下った通りの突当りにある。ルイ14世の1671年に竣工、数々の功績を遺す。1851年フーコーが振り子を使って「地球の自転」を証明する公開実験を行ったことでも有名。使節団は、1859年作製の「フーコーの太陽儀」を見ている。
同日:最高裁判所
1区シテ島の3分の1を占める建物の中にある。裁判の様子、牢獄も見学している。使節団訪問時は陪審制(陪審員は罪の認定のみ判断)であったが、その後1941年参審制(参審員が裁判官と同格で罪の認定、量刑判断まで行う)に変わっている。
同日:伊藤副使によるエルブーフのラシャ工場視察
セーヌ河下流で大西洋に面するセーヌ・アンフェイエール県エルブーフのラシャ工場を視察した伊藤副使が同日パリに帰還した。当地はラシャ製造の一大大生産地で、市民のほとんどがラシャ製造に関連する職業に就いている。
(冨田兼任記)