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GJ研究会:「『21世紀の黒船=コロナ』から現代文明、文化、生活と幸福について考える」

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日時 2021年2月27日(土) 午後1時半から4時半
場所 ZOOMによるオンライン
講師 泉 三郎(泉 桜舟)米欧亜回覧の会理事長 「21世紀の黒船=コロナ」から現代文明、文化、生活と幸福について考える(ブログ「真直美舎」(manabiya)より)
参加 15名

昨年9月から毎週土曜日にパステル書画を含めコラムを計15回、特に、将来を担う若者達に伝えたいとの思いでブログに書いた。そのエッセンスを述べたい。

1 . 真の幸福とは何か
現代文明の大樹には、百果豊熟し、人々は中世時代には一部の貴族や富豪しか享受しえないような生活を楽しんできた。これに急ブレーキをかけたのが、コロナだ。ドイツ人女性のヴィヴィアン・リーチさんは、コロナからの手紙として「地球の嘆き」で、人類の繁栄のため地球の生態系が壊されたとし、世界中に共感の波紋を広げた。

さて、文明がこのように発展したのに、どうして誰もが幸福になれないのだろうか。原因は、単純明快。富が偏在して、貧しい人が多すぎるから。我々は今、地球環境の劣化と、民の生活の劣化という重大事態に直面している。人間は、「名声と利欲」を求めて生きているが、ここらで、「名利共休」にしてはどうか。

本当の幸福に関し、中国やアメリカなども調べてみたが、仕事、金銭、健康、家族・友人、生活(衣食住)の5つが充たされておれば、幸福といえよう。それに、「夢」と「愛」があれば、人は荒波や困苦を乗り切って幸福をつかむことが可能である。コロナ下でも、近所の自然の美しさに気づいたり、ヴァーチャルな出会いを楽しんだりできる。大事なことは、金や名を追いかけるのではなく、今、ここにある幸せを味わうことだ。「明珠在掌」とは、「楽しみは近くの手のひらの中にある」という言葉だ。

2 . モアモア文明から適々文明へ
「もっと豊かに、もっと便利に」というモアモア文明で我々は発展してきた。しかし、文明は一言でいうと道具であり、今やその道具が主人になってしまっているのではなかろうか。

では、どのように文明と付き合うか、そこで見つけたのが「適」の一字である。孔子は「過ぎたるはなお及ばざるがごとし」といい、ゲーテは「豊かさは節度の中にだけある」といっている。適性、適量、適処、適時、そして、適度が大事だ。

人生では、病気、怨憎、失意、貧乏、老衰などの悩みがある。でも、色々の対処法がある。悩める人は、チャップリンの「SMILE」でも聞いてほしい。あるいは、美空ひばりの「川の流れのように」もいいだろう。ゲーテは言った。「ともかくもあれ、人生、そはよきかな」と。楽しみは掌中にあり、日々の生活にあり、それに気付くか、気付かないかで「幸・不幸」が決まる。

3 . 天地人和楽
コロナの教えてくれたことは、まず、シンプルな日常生活の幸福である。家族が家族らしくなり、近所の散歩など暮らしの中に小さな喜びをいくつも見つけることができた。次に通勤通学のバスや電車に乗ることが少なくなったため、近所の自然の風物などを感じる機会ができた。第三に仕事もリモート、テレワークによる仕事が効率的に進むようになった。第四は、お金を使う機会が減って、今まで余り買う必要のないものまで買っていたことに気づいた。第五は別次元での大きな訓戒で、大空港にジェット機がずらりと翼を休めている光景は象徴的であり、ロックダウンされて人影のない街は、第三次世界大戦に類する大事件といえよう。

コロナは、幕末の「黒船」に当たるような衝撃的な事件と考える人がいる。幕末の2人の偉人、佐久間象山は、日本は開国し文明を摂取すべし、目指すべきは「西洋の芸術(技術を含む)、東洋の道徳」と訴えた。横井小楠は、当面の策として、「富国強兵」と「殖産興業」を述べたが、その先に堯舜孔子の道を明らかにし、「大義を四海に布かんのみ」と気宇壮大な夢を語っている。福沢諭吉は「人間の高尚」、渋沢栄一も「恕」ということで、2人とも、「徳」の重要性を述べている。

最後に、今後の日本が目指すべき方向として、天地人和楽というフレーズを思いついた。自然を大事にするという日本の伝統思想に根差しながら、「和楽」という柔らかい表現が現代的だと感じた。それを具体的にしたのが、2016年12月のシンポジウムで発表した「美味し国・ニッポン列島」の小文である。

(質疑応答及びコメント)
-泉さんの人生経験を踏まえてのメッセージを楽しむことができた。幸福とは何か、人によって違う。人は窮地に立ってはじめて、今まで、幸せだったと痛感するものだ。気仙沼の復興について、ZOOMなどで今までより多い600人を動員できた。i-cafe シンガーズのオンラインコーラスも今までにない楽しみ方が見つけられた。

-長寿というが、あまりの長寿を求めるより、適当な長寿でよいのではないか。お金があれば幸せかというと、金儲けにこだわって、株が動く9時から10時は催しに参加しなかったり、旅行なども行かない人がいるが、これなどは、幸せとは思わない。病気の人に健康が幸せというのは、酷だ。(確かに、言葉は難しい。病気の人に健康というのは、失礼だ。人それぞれの置かれた状況で幸せは違う。歩けて、食べられて、しゃべることができれば、生きている価値を感じると思う。)

-我々世代は、戦争のときに生まれ、コロナのときに死ぬ、思いがする。コロナは、神様の罰というが、自然発生でなく、生物兵器によるものではないか。

-泉さんの幸福論、愛など面白かった。スイス人は、人生に必要なものは「ユーモアと愛と友情」といっている。今回のコロナで、日本は、先進国ではないと痛感した。すなわち、デジタル化の遅れ、医療体制の不備、女性の社会進出の遅れなど。

-この泉さんのメッセージは、世界に対するものと受け止めた。日本的であり、仏教的でもある。国連の世界の幸福度ランキングで日本は、62位。なぜ、こんなに低いか、その大きな理由は、社会の寛容度が低いこと。コロナからの警告を謙虚に受け止めて、コロナとどう共生していくかを考えるべき。

-日本に自由は相当あると思う。韓国、特に中国では、QRコードで患者を追いかけるシステムだが、日本は、マイナンバーと口座をリンクさせるのも反対が多く実現できなかった。デジタル化の遅れは、政府だけではなく、メディア、国民にも問題がある。幸福の一つに、睡眠を加えてもよいのではないか。

-泉さんの話は、和尚さんの講話を聞くように楽しめた。コロナ下で、自分なりに、なるべくテイクアウトを利用したり、美味しいと声をかけたりしている。中国の台頭を懸念しており、日本も、尖閣列島の防衛にもっと関心を持つべき。

-泉さんの進歩主義への懐疑に共感。アメリカを見ていると、分裂がひどくなっている。その大きな要因は、格差にある。今までのアメリカと違うアメリカに変容していると考えるべき。コロナ下で、ピンチをチャンスに変えようではないか。イタリアでは、ペストで大被害が生じたが、神様はいないということで、宗教改革が起こり、ルネサンスが起こった。

日本は、今後、教育を変えるべき。正解を教えるのではなく、正解を考える力をつける教育をすべき。そのために一番の方法は、近現代史を教えること。社会では、正解は一つではなく、二つも三つもある。debateを通じて、このことを教えることが大事。中国の台頭は脅威だ。これに対処するには、抑止力という考えから一度離れないといけないと考える。

-今日の話は、お茶席で聞くような思いで、楽しませてもらった。考え方はよく分かったが、大事なことは、実際に日々「明珠在掌」の心境で過ごせるかどうかだ。日本が今後どの方向に進むべきか、これから我々で議論していきたい。

(文責 塚本 弘)

 

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