日時 2020年11月21日午後1時半から4時半
場所 日比谷文化図書館7人、及びzoom参加7人
講師 森本 淳之氏(元三菱地所専務 会員)
内容「これからの日本はどうあるべきか」自分の生い立ちと来し方を振り返り、人生の卒論のような形で聞いていただきたい。
1942年(昭和17年)東京大田区生まれ。1944年疎開で広島県世羅郡へ。兄が原爆に遭遇、戦争の悲惨さは、記憶にあり、平和こそ大切という信念。1951年東京の小学校に転入し、中学、高校を経て、1960年一橋大学経済学部に入学。直ちに安保闘争に参加、その後1962年に四国への旅行で中村市の幸徳秋水の墓参りに行った際、大逆事件の生き残りの坂本清馬氏に会い、感銘を受ける。ゼミは、種瀬茂(後に学長、近経とマル経をカバーされた先生)。卒論は、「マルクス−ヘーゲルに見るマルクス」。ヘーゲルの中に若きマルクスが入り込んだら、という想定で論述。卒業後、新聞社や出版社も受けたが、結局、先輩の勧めで、1965年に三菱地所。3年目に東京流通センターへ出向。その後、全国のニュータウン開発に係わる。日本のバブル期の開発ブームを経験。1986年人事部へ転任し、福沢社長の下で会社改革。その後バブルの崩壊の際は、本社取締役開発業務部長として、バブル収拾に奔走。2002年に専務・住宅事業本部長、2007年東京流通センター社長を経て、2013年退任。
2001年より小泉内閣は規制改革や新自由主義政策を進めて、大店法廃止や、人材派遣の自由化などを実施してきた。これに反旗を翻したのが、宇沢弘文氏だ。市場万能論では、世の中は良くならず、社会的共通資本の充実が大事との考え方だ。
今、世界は文明の転換期にある。伊東俊太郎氏の「比較文明」(1985年)によれば、今、人類は科学革命と精神革命を統合した人間革命を進めるべきとしている。西洋と東洋の間に立つ日本が地球温暖化、資源・人口問題、核兵器など、一国単位ではどうにもならない課題に取り組むべき。梅原 猛氏は、自然を克服した今、その征服がやがて人類そのものを滅ぼす危険性を持っていることが明らかになってきたとし、生きとし生けるものがすべて共存する人類哲学の必要性を述べている。
日本の最大の課題は、人口減少と高齢化社会への対応、財政再建と経済再生であり、若者が希望を持てる国にしなければならない。目指すべき方向は、現行憲法の非核平和主義と民主主義の堅守、地球の気候危機に立ち向かう脱成長の「知足循環型社会」、成熟国として自然と歴史と文化とスポーツを大切にする国の3つだ。今の暴走するグローバル資本主義、モラルなき利益至上主義は最早限界に来ており、節度ある市場経済に向かうべき。
(三菱地所の都市開発を振り返っての印象はどうか)戦後の焼け野原から、しゃにむにやって来た。ニュータウンは国や自治体とともに進めてきた。欧州の街もずいぶん見た。日本に比べ、文化の厚みが違う。(トランプ大統領について)コロナに負けたともいえる。また、そのことは、コロナが人類にもたらした最大の貢献とも言えるかもしれない。(中国とどう付き合うべきか)五百旗頭先生は、政治、安保では日米同盟、経済では日中協商が大事と言っておられた。中国を孤立させないで、世界の中で敬意を持たれる国になるよう日本が手を貸すべきだろう。(文責 塚本 弘)