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i-Cafe:「官主導の国民音楽に先立つ明治期のキリスト教的音楽教育・実践の諸相」

日時:令和2年10月11日(日)13:00~15:00
場所:ZOOMによるオンライン開催第54回i-Cafe開催報告

講師:小檜山ルイ先生(東京女子大学現代文化学部教授、
お茶の水大学ジェンダー研究センター客員教授)
学位:国際基督教大学大学院博士(卒業論文:「米国
婦人宣教師・来日の背景とその影響 : 明治初期にお          ける日米文化交渉の一系譜」)
研究テーマ:女性史、ジェンダー論、比較文化
アメリカ社会史、日米関係史。特にアメリカ女性と
日本及び東アジアとの接点に関心。

著書:
『日本にとってのキリスト教の意義』
日本キリスト教文化協会編共著教文館
2019/09
『アメリカ婦人宣教師 ― 来日の背景とその影響』1992年 –
女性史青山なを賞(1993年)、キリスト教史学会学術奨励    賞
(1994年)他
『アメリカ・ジェンダー史研究入門』編、2010年など

内容:明治初期におけるキリスト教的音楽空間・教育と官製音楽空間・教育歌や飲食を伴うi-Caféは本年2月に第53回を四谷のガイヤールで開催して以降コロナ禍のため中断を余儀なくされていた。10月11日(日)にインターネット形式に変更して再開したところ、地方や海外の会員、関西の大学の先生方も含めて48名と、かってない多数の方々にご参加いただけて、ニューノーマルの希望が拓けたのは嬉しい限りだった。

会は従来同様第一部お話、第二部ミニ・コンサート、第三部交流会の三部形式で進め、第一部には東京女子大学現代教養学部教授小檜山ルイ先生をお招きして「官主導の国民音楽に先立つ明治期のキリスト教的音楽教育・実践の諸相」と題して明治期の西洋音楽導入に米国キリスト教宣教師の果たした役割を中心にお話いただいた。

小檜山先生は、国際基督教大学大学院博士論文「米国婦人宣教師・来日の背景とその影響 : 明治初期における日米文化交渉の一系譜」で、明治期に日本に派遣された宣教師の3分の2が女性だったとして、日本の教育・西洋音楽普及に女性宣教師が果たした役割が大きいことを強調された。また、日本人が讃美歌集を好んで買い求めるなど讃美歌に馴染んだのはキリスト教の持つ神と永遠など、広く長い空間の想像力が魅力だったのだろうとした。

また昨年アメリカ学会の中原伸之賞を受賞した近著『帝国の福音ールーシィ・ピーボディとアメリカの海外伝道』では宣教師を送り出したアメリカの国内事情を検討した由。日本に婦人宣教師を多数派遣することになったのは、音楽のできる婦人宣教師をしたところ、人を集めるのに有効だったからの由で、音楽の力の表れだろう。讃美歌が教育と礼拝の音楽から、ナショナリズムを含む運動の音楽に発展したとするところは傾聴に値する。

なお、小檜山先生は明治期の西洋音楽導入を官製ルートと民間ルートに分け、前者は軍楽と音楽取調掛、後者の主たるものを賛美歌とする。その上で忠君愛国・自然賛美・天皇賛美を歌った小学唱歌集91曲中16曲が讃美歌と同一旋律だったとし、編集者のお雇いメーソンが熱心なクリスチャンだった影響を指摘した。

質疑応答の時間では、2月のi-Caféで「築地居留地と近代音楽-讃美歌との出会い―」をお話いただいた中島耕二さんはじめ多くの参加者から活発な質問・ご意見を頂戴した。

第2部ミニ・コンサートでは、♪明治の讃美歌と唱歌♪と題して、ソプラノ武藤弘子さん、ピアノ植木園子さん、合唱i-Café Singerで、お話に絡めた讃美歌2曲と音楽取調掛で西洋音楽を学んだ納所辨次郎作曲の唱歌「うさぎとかめ」、そしてアンコールに「見上げてごらん夜の星」を披露した。これらは、事前にリモートで収録したものを吉原さんが編集したビデオ上映だったが、臨場感のある見事な出来栄えだった。

小檜山先生にもご参加いただいた第三部交流会もリアルの時同様に盛り上がって、初めてのネット形式i-Caféは盛会裏に終了した。(岩崎洋三記)

 

 

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