*日時:平成30年2月17日(土)13:30~16:30
*場所:国際文化会館セミナーE室
*演題「不安な個人、立ちすくむ国家~モデル無き時代をどう前向きに生き抜くか~」
*講師:菊池沙織氏(経済産業省 経済産業政策局 知的財産政策室 室長補佐)
<プロフィール>
*平成25年4月 東京大学法科大学院終了後 経済産業省入省、
資源エネルギー庁資源・燃料部政策課
*平成26年7月 経済産業政策局産業資金課・新規産業 室・企業
会計室総括係長
*平成28年7月 大臣官房総務課 総括係長
*平成29年7月~現職 経済産業政策局 知的財産政策室
室長補佐
平成28年に「次官若手プロジェクト」に同年五月に同プロジェクが発表した報告書「不安な個人、立ちすくむ国家~モデル無き時代をどう前向きに生きるか~」作成メンバーの一人でもある
<議事要旨>
経済産業省若手が、昨年5月に発表した報告書「不安な個人、立ちすくむ国家~モデル無き時代をどう前向きに生きるか~」について、入省5年目の菊池 沙織さんから、講演していただいた。日本は、世界一の健康寿命を誇る国になったが、高齢者の多くは働く意欲があるのもかかわらず、働く機会がなく、テレビを見て過ごす人が多い。終末医療についても、自宅で最後を迎えたいと多くの人が希望しているが、実際は、病院で亡くなる人が多い。
アメリカやフランスでは、近年、終末医療の看護体制を整備し、自宅で最後を迎えられるようにしている。また、フランスでは、胃ろう などの延命治療を行わず、患者が望む自然な死に方を是認する文化が定着している。母子家庭の貧困率は、世界でも突出して高い。非正規雇用の年収は低く、貧困が連鎖、固定化する構造になっている。若者に活躍の場が少ない。一言でいうと、わが国の社会システムは、個人の選択を歪めている状況にある。こうした社会の仕組みを抜本的に組み替える時期に来ているのではないか。例えば、一律に「高齢者=弱者」とみなす社会保障をやめ、働ける限り貢献する社会へ、子どもや教育への投資を財政における最優先課題に、「公」の課題を全て官が担うのではなく、意欲と能力のある個人が担い手になるなど、を進めてはどうか。これにより、個人の帰属、つながりを回復し、不確実でも明るい未来を実現すべきではないか。2025年には、団塊の世代の大半が75歳を越えている。それまでに高齢者が支えられる側から、支える側へと転換するような社会を作り上げる必要がある。そこから逆算すると、この数年が勝負。二度目の見逃し三振は もう許されない。
以上のような、菊池さんからの明快な提言を受けて、活発な議論を行なった。
終末医療については、患者が生きていることにより、妻が給付を受けるなどの事情もあり、そういったここの事情も配慮すべきという意見があったが、これに対し、制度設計においては、個人の選択を尊重しつつも、医療費の過重負担は、削減すべきとの議論もあった。子供を育てやすい環境をどう作るか。AIで、失業が増えるのではないか。ベーシックインカムの仕組みも検討すべきではないか。財政再建をどうするか。いずれの問題も、難しい問題であり、「公」に依存することなく、「民」の側からも、未来をどう築いていくか、一人一人の覚悟が必要ということで、議論を終えた。次回は、「21世紀からの日本への問いかけ」というタイトルで、同じく経済産業省若手の石渡 慧一さんから、世界と日本がどう関わるかという視点も含め、講演していただくことになった。(文責 塚本 弘)
<次回予告>
*日時:平成30年4月14日(土)13:30~16:30
*場所:国際文化会館、セミナーE室
*会費:@1,000円
*演題:「21世紀からの日本への問いかけ」
*講師:石渡 慧一
米欧亜回覧の会URL:http://www.iwakura-mission.gr.jp/
GJ研究会事務局:畠山朔男 hatakeyama@joy.hi-ho.ne.jp